なぜですか?

あなたはなぜ、そこにいたのですか?


わたしはそこにいて、あなたもそこにいた。
たったひとことがあなたとのきっかけで、たったひとことがふたりを近づけた。
ほんの少しがたくさんで、ほんの少しで満たされた。


なにも知らないあなたとわたし。
なにも知らず、なにも分からない。
わたしたちはたからものを探しに、洞窟へふたりではいっていった。
たからものを見つけるために、ふたりではいっていった。


しばらくして洞窟のなかで魔法つかいにあいました。
そしてひとこと、いいました。


きづいたとき、もう魔法つかいはいませんでした。
ふりむいたとき、あなたもいませんでした。
もどろうとしても、もときたみちはわかりませんでした。
そして、たべるものがなくなりました。


ようやく洞窟からでたとき、そこにはみずうみがありました。
だけど、まわりにはだれもいませんでした。
くもり空のした、くちはてた木やかれた草、はいいろの世界がひろがっていました。
そこにあるたべものはすべてくさっていました。


いちどそこから出ようとしました。
しかし、ちかくのぬまでおぼれてしまいました。


いまもわたしはそのみずうみのほとりにいます。


「もうあなたはもどれない。わたしももどらない。」

それが魔法つかいのことばでした。