さくら。

いつが最後だったろうか。
あんなに周りあったさくらを綺麗だと思ったのは。


恋しい。
さくらが、恋しい。


此処は北の大地、北海道は札幌。
本州のような春の訪れには程遠く、未だ肌寒い日々が続いている。
そしてさくらは未だ、咲いていない。


5月始めだそうだ。
天気予報がそう、開花の予報を伝えている。
一月遅れた春。
待ちどおしい春。


思い出せば去年の春は暗かった。
そして、その前も。
さくらは見えていなかった。
そんな余裕はなかった。


病んだ心が見せた、色褪せた風景。
全ての感覚は薄れ、弱まる。
そんな私はさくらになど目を向けなかった。
それが今…。


私はさくらを欲している。
さくらが少しでも早くみたいと望んでいる。


その象徴は昨日起きた。
…夢に出たさくら。まだ咲き始めで、ちらほらと目につく程度。
そんなさくらを一人、道の片隅から和やかな雰囲気でずっと眺めていた私。


惹き付けられる理由なんてない。
…ただ、見たいと思う…それだけなんだ。