はじめての時のこと。

 あの日。
 そう、あの日。
 降りしきる雨の中の出来事。
 体育館の屋根に響きわたる雨音。

 それしか覚えていない。
 細かい事は何も。


 俺がこうやって、独りになることが増えたのは何時からだろうか。
 覚えても無い。
 ただ、俺は他の人とは違う対人関係だな…とは思ってる。

 俺の思う普通っていうのは、普段から気軽に行き来している関係。
 だけど、俺はそんな関係はないし、休みに他人と居るっていうだけで特別。

 昔からコミュニケーションをとることが下手だったと思う。
 ジコチュウで、相手を気にしない。自信過剰のカンチガイ野郎。
 そんな奴に誰が近寄ってくるものか。

 …今思えば、そんな奴だったから。
 まだ、そんな影は残っているのだけれど。

 こうやって過去を思い出していると、周囲と自分との精神的な成長の差が、嫌になるほど浮き彫りになる。
 今までは、周りが自分より大人だったから、成長していたからこんな奴でも表向き、認めてくれていた。
 だから、今度は自分がもっと大らかな気持ちで人を容認できたらな…と思う。

 今はまだ、自分自身の何処かで欠点ばかりを嫌う自分が居る。
 たった一つの欠点で、好意的だった他人を嫌いになった。
 無論、そんな自分が嫌で、そういう風に思った自分に対して嫌悪感を抱いた。そして、そんな自分を責めた。

 いつまでも自分の欠点を嫌い、それを責めるのは別にいい。
 でも、自分に欠点があるように、他人に欠点があるのは仕方が無い事なのだから、それを責めたり、ましてや好意的だった人を嫌うなどと言う事はいけない事なのだと思う。

 人を好くと言う事は、その人の全てを解った上で好く訳で、たった一つの欠点の為に嫌いになるというのは、実際にはその人の事を好いている訳ではないということ。
 つまり、たった一つの事で人に対して嫌悪感を抱いたりする俺に普通の対人関係など築けるはずもない。

 とある本を読み、気付いた事。
 そんなことに気付かされてから一年も経ったのにも関わらず、未だに一つ一つの出来事に嫌悪感を抱いたりしている。

 何時までも大人になれない自分。
 成長しない自分。

 人を心底好く事が出来ない限り、本来あるべき優しさなんてものは、結局上辺だけのものであり、偽りの塊なのだ。
 そして、本当のものを持っている人はそれに気付く。

 だから、今まで付き合ってきた人との対人関係が薄いのだ。
 彼らは少なくとも、自分よりも成長していたのだから。

 独りになると気付く。
 幼すぎる自分に。