あの夕方の日の話

とても不思議な、それでいて当たり前のように思えるあの赤焼けた夕焼けの日の話。
たまにふと思い出す、その出来事。


確かあの日、彼は中学校の門の向かいにあるフェンスの辺りに立っていた。
何故そこにいたのかは定かではないが、多分偶然だろう。
家から100m程のその場所。時刻は16時過ぎ〜17時頃だと思われる。
晩秋の11月…彼はトレーナーを着ていたが寒そうにしていた覚えがある。


サッカーボールを網に入れ、彼はそれを持ち、足で蹴りながら歩いてた…と思う。
つまらなそうにしていた彼。すると西の方から何と無く見覚えのあるコが来たみたいだった。
大して話した事もないのに話している彼とそのコ。


「今帰りなの?」
そんな事を彼が発したような気がする。
そして何故かそのまま歩き出す二人。


二人は何故か普通に話していた。時には笑ったりも。


「あたしの家、ここなんだ。」
すぐにそのコの家に着いた。
普通に言葉を交わして別れる二人。まともに話したのは多分今日が初めてだろうに。


それが今ある記憶の最初の最初。
まさかあんな事になるなんて思ってもみなかった、10年前の話である。