思い出すことばかり。何も進まない。

 最近、なぜか過去を思い出すばかりの俺。

 あの頃の俺はさ、とにかく隠し続けてた。
 本当の事。感情。

 恐かった。
 常に緊張の中で過ごさなければならなかった。
 敵対している相手に、隙を与えないためにも。

 人を近づけさせない雰囲気を放っていた。
 人が恐いから。情報が漏れるのが、恐かったから。

 …そんな気持ち、誰一人として伝えた事はなかった。
 それが弱みになってしまうから。

 その反動で、多くの人を傷つけてた。

 冷酷な人間。
 今でもそうあり続けてるかもしれないけれども、そんなヤツだった。

 俺の想いは届かない。
 そう、ずっと思ってた。

 中身のない、そんなヤツの想いなど、届くはずもないと思ってた。
 …ひたすら消した。

 浮かんでは消し…また浮かび上がる。
 それでも消した。

 そんな俺を知る人は、あの時居ないだろう。

 一日、一日を割り切って考えてた。
 そうでなければ、常に進めなかった。

 そんな俺は、精神的にボロボロだった。
 …その一端が現われたのが、卒業の前日。

 とうとう泣いた。

 当時、俺は一年に一度も泣かないくらいに泣かなかった。
 それなのに…流れ始めた涙は止まらなかった。
 ずっと…。

 もうダメだ…と思った。
 絶対にガッコには行けない…と思った。

 でも、隠された自分しか、そこには現われなかった。
 すぐに消えた、本当の俺。

 …戻るためには消すしかなかった。
 辛かった。全然大丈夫でもないのに、嘘をつくのも嫌だった。
 それでも、自分を崩すわけにはいかなかった。

 …崩してしまったら、今までの自分はなんだったのか…分からないから。

 そんな一瞬。
 全てはガラスケースに入った石のようなもの。
 それがあの時代。

 もう人前でも普通に流せる涙。
 あまり気取らなくなったコトバ。
 本音の感情。

 当たることも、出来るようになった。

 …でも、まだ変わらなければならない自分が居て。

 いつまでも落ち着くことはない。
 …また一年後に見れば、見方が変わっているだろう。